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東京芸術劇場のガルニエ・オルガン (⇒写真集) |
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ホールのデザインと聴衆を意識した、マルク・ガルニエ作の3つのオルガン 伝統的なスタイルのオルガンに加えて、ホールの現代的な外観とマッチした、斬新なデザインのオルガンが目を引く。面白いのは、両者の本体が回転盤の上に背中合わせに設置してあり、演奏会の趣向と選曲によってクラシックかモダンかのオルガンが選べ、客席に向けられること。また、前者は外から見ると1つのオルガンだが、実は調律の異なる2台のオルガンが組み込まれている。現代のオルガンの名匠として知られるフランスのマルク・ガルニエ(Marc Garnier)が手掛けた。1991年秋完成。
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クラシック:ルネッサンス様式+バロック様式 | モ ダ ン |
3種類の調律法による東京芸術劇場のオルガン (同劇場パンフレットより) オルガンには長い歴史があり、時代により国により違いがあります。東京芸術劇場の楽器の設計は、歴史上のいくつかの違うスタイルのオルガンを1つにまとめてみようという発想が基になっています。 この大ホールは全く現代的な装いをもっています。ここにヨーロッパの教会オルガンのようなデザインを持ってきたのでは調和いたしません。一方、17−18世紀のオルガン音楽が鳴ったとき、それに相応しい外観も欲しくなります。このジレンマを解決するために、回転方式を考えました。オルガンケースは背中合せに2つ作り、第1の面はいわばクラシックの顔、第2の面はモダンな顔にしました。前者はヨーロッパの伝統に沿った形で、後者はホールの美観の点でも、楽器の伝統の点でも、それぞれの長所を最大限に生かすことができたと考えています。 最大のパイプを含む3列の32フィート管は、スペースと音響上の効率から、バルコニーの奥の壁に接して置きました。総計126のストップによって制御される約9000本のパイプは、14の音響グループ(ストップ・リストのHoofdwerk、Borstwerkなど)に区分されて、8つの手鍵盤と2つの足鍵盤に配置されています。クラシック・デザインの面にはルネッサンス様式とバロック様式という2台のオルガンがはめ込まれていて、3段階鍵盤の演奏台が両方に共通して使われます。モダン・デザインの面はフランス古典からロマン派への移行期のオルガンが入っていて、5段階鍵盤の演奏台で演奏されます。全部のパイプに空気を送るためには5台の送風機と48個の風箱が必要でした。回転盤は速度可変の3つのモーターを備え、コンピュータで作動します。楽器全体で70トンの重さがあります。演奏者の便宜を計って、レジストレーション(ストップ組合せ)記憶のために3つのコンピュータが用意されています。キー(鍵)操作も、ストップ操作もメカニカル・アクションです。古い様式の楽器の方にはハンマー処理した鉛パイプを使っています。整音は、非常に良好なこのホールの音響条件に合わせて行いました。 第1番目のオルガンは、1オクターヴの中に8ヵ所の純正3度を含むミーントーンで調律されており、オランダ・ルネッサンスの精神で作られています。ピッチは 467Hz。特にザムエル・シャイト、スヴェーリンク、シャイデマンの曲に適しています。 第2番目のオルガンは、18世紀中部ドイツの味わいを持っており、バロック調律法、415Hzのピッチになっています。J.S.バッハやその同時代の人の作品に向いています。 モダン・デザインのケースには、フランス古典期を基本にして、部分的にフランス19世紀半ばのロマン派の要素を取り入れたオルガンが入っています。調律はほとんど平均律、440Hzのピッチです。シンフォニックの曲にも、フランス古典オルガン音楽にも適しています。 このように、オルガニストは弾こうとする曲に応じてオルガンを選び、音楽学の立場から最もオリジナルに近い演奏をすることが可能になっています。
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